近所の人に会ったとき、子どもが親の後ろに隠れてしまう。「ほら、こんにちはは?」とうながしても、下を向いたまま。親のほうが恥ずかしくなって、「すみません、人見知りで…」と謝ってしまう——。
あいさつは大切だと思うからこそ、できないとつい焦ってしまいます。「このままで大丈夫かな」「しつけができていないと思われていないかな」と、気になる方も多いのではないでしょうか。
今日は、子どもがあいさつできない理由と、自分からあいさつできるようになる関わり方をお伝えします。結論から言うと、人見知りの子があいさつできないのは、あいさつの大切さを知らないからではなく、緊張や不安が先に立ってしまうからです。その場で言わせるより、安心できる経験を積み重ねることが近道になります。
人見知りは「慎重さ」の表れ
人見知りをする子は、知らない人や新しい場面を、よく観察してから動くタイプであることが多いものです。「この人は誰だろう」「どんな人かな」と様子を見ているので、すぐには声が出ないのです。
これは、悪いことではありません。慎重さは、危ないことを避けたり、相手をよく見て関わったりする力にもつながります。人見知りを「直す」ものと考えるより、その子のペースを大切にしながら、少しずつ慣れていくと考えると、親の気持ちも楽になります。
子どもがあいさつできない3つの理由

1. 緊張して声が出ない
知らない大人に話しかけられると、子どもは体がかたまってしまうことがあります。言わなければと思っていても、声が出ないのです。
2. 「言いなさい」と言われると、かえって言えない
周りの大人に見られながら「ほら、あいさつは?」とうながされると、注目が集まって、さらに緊張が強くなります。言えなかったことで叱られると、次のあいさつの場面がますます苦手になってしまいます。
3. 相手のことをよく知らない
子どもにとって、近所の人や親の知り合いは、「誰だかよくわからない大人」です。親が知っていても、子どもにとっては初めて会う人と同じことがあります。
無理に言わせると、どうなる?
その場で何度もうながしたり、言えなかったことを叱ったりすると、子どもは「あいさつ=怒られる嫌な場面」と感じるようになることがあります。すると、人に会う場面そのものを避けたくなってしまいます。
あいさつの目的は、相手と気持ちよく関わることです。「言わされるあいさつ」より、「自分から出てくるあいさつ」を育てるには、少し時間がかかっても、安心できる関わりを続けることが大切です。
自分からあいさつできる子に育つ4つの関わり方

1. 親が先に、気持ちよくあいさつする
子どもは、親の姿を見てあいさつを覚えていきます。親が明るく「こんにちは」と言う姿を何度も見ることが、いちばんの練習になります。子どもが言えなくても、親が代わりにあいさつしていれば十分です。
2. 声以外のあいさつも認める
声が出なくても、おじぎをする、手をふる、目を合わせる。これも立派なあいさつです。「今、ぺこってできたね」と、小さな一歩を認めてあげましょう。
3. 相手のことを、前もって話しておく
会う予定のある人のことを、「今日はお母さんのお友だちの〇〇さんに会うよ。犬を飼っている人だよ」と前もって話しておくと、子どもは心の準備ができます。相手がどんな人か少しわかるだけで、緊張はやわらぎます。
4. あとで、できたことをふり返る
その場では何も言わず、家に帰ってから「さっき、手をふってたね。〇〇さん、うれしそうだったよ」と伝えます。あいさつをすると相手が喜ぶ、という経験が、次のあいさつにつながっていきます。
家でできる「あいさつ遊び」
家では、ぬいぐるみや人形を使ってあいさつごっこをしてみましょう。「くまさんがお店に来ました。何て言う?」。遊びの中なら、子どもはリラックスして声を出せます。
また、家族の間で「おはよう」「いってきます」「ただいま」を、毎日楽しく交わすことも大切です。家の中のあいさつが自然になると、外でのあいさつも少しずつ出てきやすくなります。
周りの大人に伝えておくと楽になること
園の先生や、よく会う近所の人には、「人見知りで、慣れるまで時間がかかるんです」と、さらっと伝えておくのもよい方法です。理解してもらえると、相手も無理に話しかけず、子どものペースを待ってくれます。
「すみません」と謝るより、「いつも声をかけてくださってありがとうございます」と伝えるほうが、相手も子どもも気持ちよく過ごせます。
あいさつ以外の「ありがとう」「ごめんね」も同じ
人見知りの子は、あいさつだけでなく、「ありがとう」「ごめんね」を言う場面でも、同じように固まってしまうことがあります。お店でおまけをもらったとき、友だちにぶつかったとき。言わなければいけないとわかっていても、声が出ないのです。
こうした場面でも、関わり方の基本は同じです。その場で何度もうながすより、親が先に「ありがとうございます」と言う姿を見せる。子どもがうなずいたり、小さな声で言えたりしたら、あとで「さっき言えてたね」と伝える。
そして、言葉が出なかったときに、責めないことも大切です。家に帰ってから「本当はありがとうって思ってたんだよね」と、子どもの気持ちを代わりに言葉にしてあげましょう。気持ちはちゃんとある、ということを親がわかってくれていると、子どもは安心できます。
人見知りの子どもは、慣れた相手には、驚くほどおしゃべりになることもあります。「この子には、この子のペースがある」と信じて待つことが、子どもにとっていちばんの支えになります。
よくある質問
Q. 小学生になってもあいさつができません。
年齢が上がっても、緊張しやすい子はいます。決まった相手、決まった場面(毎朝会う見守りの人など)から始めると、少しずつ慣れていきます。
Q. 祖父母に会ってもあいさつしません。
久しぶりに会う祖父母は、子どもにとって緊張する相手のこともあります。しばらく一緒に過ごして慣れてくると、自然に話し始めることが多いので、最初のあいさつにこだわらなくて大丈夫です。祖父母にも、そう伝えておくと安心です。
Q. 親として、どこまで待てばいい?
期限を決める必要はありません。昨日より少しできたことに目を向けていれば、成長は必ず見えてきます。
Q. 親自身も人見知りで、あいさつが苦手です。
大人でも、あいさつに緊張する人はたくさんいます。大きな声でなくても、笑顔で軽く会釈するだけでも、子どもにとっては十分な手本になります。親が無理をしすぎず、自分なりのあいさつを続けることが大切です。
Q. 新しい習い事や園で、なかなかなじめません。
新しい場所に慣れるまでの時間は、子どもによって違います。最初の数回は、少し早めに着いて、人が少ないうちに場所に慣れると、緊張がやわらぎやすくなります。先生にも、慣れるまで時間がかかることを伝えておきましょう。
まとめ:あいさつは「安心」から生まれる
- 人見知りは、よく観察してから動く「慎重さ」の表れ
- あいさつできないのは、緊張や、注目されることへの不安から
- 無理に言わせると、あいさつが「嫌な場面」になることも
- 親が先にあいさつ、声以外も認める、前もって話す、あとでふり返る
- 家でのあいさつ遊びと、毎日の家族のあいさつが土台になる
次に誰かに会ったときは、子どもにうながす代わりに、親がにっこり「こんにちは」と言ってみてください。子どもが手をふったり、おじぎをしたりできたら、家に帰ってから「できてたね」と伝えましょう。その積み重ねが、いつか自分からのあいさつにつながっていきます。
